inner-castle’s blog

読書、キリスト教信仰など内面世界探検記

近代短歌百人一首

 

 以前家族で、啄木の短歌の上の句を読み、下の句を答えるカルタ遊びのようなことをして遊んだことがある。啄木の歌はよく知られていて、誰でもいくつか知っていたが、歌集を手元においていたわけでなく、すぐ種が尽きてしまった。百人一首なら、すぐ思い出せるのだが、なかなか世代を超えて共通に思い出せる和歌は少ないものだ。

 パートのアルバイトや、家事の世話など、日々忙しく過ごしてはいるが、生活の主役ではなく脇役に過ぎなくなった。取り立てて夢中になる趣味もなく、心寂しい時に、ふと思い出せる和歌があれば楽しいだろうと思う。百人一首の和歌もいいが、あまりに自分の感覚と違いすぎる。読んで心惹かれた和歌を書き留めて、自家製百人一首を作ったらどうだろうかと思いついた。白紙のカルタ用紙が売っているので購入することもできるが、まず和歌を集めることから始めなければならない。

 とりあえず暗記している啄木や茂吉、赤彦などから初めて、昔の人でも、良寛西行の忘れがたい歌など、順不同に書き留めてカードを作ることにした。上の句を読めば、下の句が思い出せるように暗記し、少しずつ増やしていきたい。楽しみでもあり、物忘れ予防になればなお結構である。

 一部紹介する、

函館の青柳町こそ恋しけれ、友の恋歌矢車の花(啄木)…夫との函館の旅を思い出す

みずうみの氷は解けてなほ寒し三日月の影波にうつろふ(赤彦)…教科書で覚えた

信濃路はいつ春にならん夕づく日入りてしまらく黄なる空のいろ(赤彦)…春近く空を見上げるときに、ふと思い出すうた

山の湯にひたりて思う口ひげの白くなるまで歌よみにけり(赤彦)…ひたむきに短歌を追求してきた半生を振り返るひととき、彼ならではの思いがゆかしい。

牛飼が歌よむ時に世のなかの新しき歌大いにおこる(左千夫)…教科書から、畜産農家の労働の中で歌を作る歌人に心惹かれる。

今朝の朝の露ひやびやと秋草やすべて幽けき寂滅(ほろび)の光(左千夫)…晩年の冷え冷えとした心中に、なお残る輝きがすてき。

ほか、与謝野晶子の歌も入れたいが、下の句「われも黄金の釘を打ちたり」の上の句が思い出せないでいる。恋の歌や、「娘二十歳、桶に流るる黒髪のおごりの春のうつくしきかな」などよりも、女性の自立に自分もいささかの働きをなしたと歌った歌の方が好ましく思い出される。

人にあう機会に、その好みの和歌を教えてもらい、自分の蓄えに加えられたらたのしみであろう。また、知らなかった名歌に出会えることになる。

とりあえず、少しずつ書き留める作業を始めたく思っている。