inner-castle’s blog

読書、キリスト教信仰など内面世界探検記

バッハ・コレギウム・ジャパン「マタイ受難曲」コンサート

3月29日、標題のコンサートに行ってきた。「マタイ受難曲」演奏会はそれ程ないので、主にCDでばかり聴いてきた。だが、今年は亡夫の七回忌でもあり、身近な人を見送ったばかりでもある。そこで、夜のコンサートは体力的に敬遠しているのだが、亡き人を偲び…

ゲーテ「ファウスト」読書の記憶

小学校の三年生か四年生のころ、クラスで隠し芸大会があった。手品や日本舞踊など、当時はお稽古事が盛んだったからなかなか芸達者のクラスメートが多かった。そこに混じって私は紙芝居を演じた(何をやったかは忘れたが、図書館から借り出した童話だったと…

亡き友との一方的会話

最近、身近な人を見送って喪失感が大きい。葬式は、今流行の超簡素なもので故人の経歴紹介や告別の辞もなかったが、近親者や極親しい者ばかりなら必要もなく充分心のこもったものであった。それほど長命とは言えないけれど、80才近くまで生き、苦しみなく…

ゲーテ「月に寄せて」D259を聴いて

ヨハネ受難曲の第19曲に「思い見よ、わが魂よ」というアリオーソがある。その曲を歌っていたジーグフリート・ローレンツという歌手が気になり、やっと、「ゲーテの詩によるシューベルト歌曲集」というCDを見つけ、久しぶりにドイツリートを楽しんだ。表記の…

市川喜一著:「福音の史的展開Ⅰ・Ⅱ」

私はクリスチャンホームで生まれ育ち、教会で知り合った人と結婚し、生涯にわたって聖書を読み、説教を聞き、キリスト教関係の読書をしてきた。だが、少し掘り下げて読もうとすると、同じ福音が、新約聖書の文書毎に多少異なる事に気がつく。「律法の一点一…

ブラームス:ドイツ・レクイエム

泊まりに来ていた孫達が帰った正月2日、仲良しの従姉妹が訪ねてきた。彼女は家族と同居しているので、音楽好きだが遠慮してなかなかステレオを聴いたりピアノを弾いたりできない。そこで一人暮らしの私の家で、思う存分音楽を聴きたいとのこと。食べる物で…

六条院でのリベンジ(源氏物語妄想)

竹橋の丸紅ギャラリーで、源氏物語若菜の段の女楽のくだり「明石の御方」の衣装を復元展示していると聞き、さっそく行ってきた。文字通り、復元された平安時代女房装束と生地、それと対照させた現代皇室の衣装の写真パネルだけの小規模展示で、少し物足りな…

立教大学メサイヤ演奏会

アルバイト先で知り合った友人と、もう10年近く毎年メサイア演奏会に行っている。主に上野の文化会館の芸大演奏会だったが、今回はじめて立教大学メサイヤ演奏会にいった。アマチュアの学生中心とはいいながら、キリスト教主義学校らしく信仰の心を込めた演…

「死人の復活」の章、家庭礼拝風景

家庭礼拝で、コリント前書を取り上げている。信徒同士だから、少しずつ聖書を読んでいくのだが9月からは難解な15章(死人の復活)に入り、苦労している。 キリスト信仰は、当時のローマ世界に燎原の火のごとく広まっていったが、肉体を魂の牢獄とする霊肉分…

アニメ「青のオーケストラ」 佐伯君のこと

漫画・アニメ好きはまだまだ続いている。標題のアニメは、「四月は君の嘘」同様、クラシック音楽絡みで少年の成長を描いたものである。クラシック音楽絡みというと、一昔前は「のだめカンタービレ」があり、指揮者を目指す音大生の恋愛に絡めて名曲をふんだん…

グレン・グールド:ベートーヴェンピアノソナタNo.30~32

私にとって音楽とは、主にレコードやCDといった媒体を通して楽しむものであり、生のコンサートは年に二三回いければ良い方である。自分で楽器を演奏することもないし、学校卒業以来、歌うことも礼拝で指定された讃美歌程度である。 だが、言葉で表現できな…

アニメ「四月は君の嘘」

この夏は、暑さ、及び取り組んでいる聖書の箇所の難解さに、限界を感じまくった日々であった。そこで、頭を使わず楽しめるアニメ漫画を見て過ごした。標題のアニメは、中でも出色の名作と思えた。それに、自分から選んでまでは聴かないポピュラーなクラシッ…

映画「エゴイスト」

映像作品は完全に娯楽のためと思っているので、深刻で悲しい話は敬遠するのだが、偶々レンタルビデオ店に返却に行ったら標題の映画がDVD新作レンタルされていた。小説も読んだことだし、鈴木亮平さんのファンでもあるので借りてみた。 原作では、主人公の…

台湾BLドラマ「隣のきみに恋して-Close to You」

アニメ「天官賜福」にはまって以来、私もすっかり腐女子(BL好きの女)になってしまい、堅い本に飽きると主にアマゾンプライムビデオで軽い娯楽作品を観ている。だが、殆どが思春期の少年達のモヤモヤした気持ちとか、こそばゆい性的興味本位のものが多く、見…

手束正昭著「キリスト教の第三の波」を読んで

コリント前書14章は「異言と預言」とタイトルされている。(タイトルは今までの口語訳にはなく新共同訳からで、余計なものが付加された気もしないでもない)。内容は簡単で、「異言」は(異言の賜物を与えられた)その人を造り上げる(ここに言う「造り上げ…

高山真著 小説「エゴイスト」 

待ち合わせ時間まで50分あり、薄い文庫本で時間を潰そうと思って買った。素敵な人だなと思っていた鈴木亮平さんが表紙だし、同名の映画(おそらく原作)で受賞したことがニュースになっていたので迷わず購入。喫茶店でコーヒーを前に読み始めたら、なんとま…

「全き愛は、恐れを取り除く」

最近、久しぶりに映画館で「青いカフタンの仕立屋」という作品を見た。予告編にあったブルーのシルクサテン地に金色のモール刺繍が施されたカフタンドレスに魅せられたからである。しかし、どうしてこうも男性の同性愛がらみの作品が多いのだろう。禁断の愛…

平井雅穂先生「ロビンソン・クルーソー」の解説

現在、独居老人として、生涯はじめて暇を持て余す生活を味わっている。かといって、旅行や趣味を楽しむ余裕は経済的にも体力的にも不足している。自然、読書やPCを利用し自宅で可能な事をして過ごすことになる。 とはいえ関心をそそられる新規な本に出会うこ…

「死」は「眠り」か?死後復活までの魂の有り様

私の大好きなバッハのカンタータに、「死よ、眠りの兄弟たるものよ」で始まる讃美歌で閉じるものがある。その他、死を眠りに例える表現は数限りなくある。使徒行伝の殉教者ステパノの死は、「そして彼は眠りについた」と表現され、ホメロスも死んだと言うこ…

子役の演じる「紅楼夢」

娘時代、「紅楼夢」を読みふけって親に叱られた記憶がある。その時の本はとっくに失ってしまったが、アマゾンプライムビデオで表記のドラマを発見した。子供が演じるのでは学芸会レベルと思ったが、少し覗いて見た。 ふっくらほっぺの子供達が、付け髭で「……

「パイドン」読後感-魂が死後も存在するか

読中感のみで終わらせるつもりだったが、やはり全体を読んでの感想書きたくなった。 「パイドン」はプラトンがパイドンから伝え聞いたSの死の有様を核とした、プラトン自身の生と死についての「言論」、と考えてよいだろう。報告者パイドンは、Sが毒杯を呷…

「パイドン」読中感⑥-霊魂不滅の証明の続きからソクラテスの死まで

三、霊魂不滅の証明-3 (8)間奏曲Ⅱ。言論嫌い(ミソロギアー)への戒め-2※ここまで読み、魂(霊魂)が死後も存在することについてのの三つの証明の論理は坑だらけで納得できない。シミアスとケベスの反論にむしろ共感を感じる。 これまでのところ、Sと…

「パイドン」読中感⑤-霊魂不滅の証明-2

ケベスが想起説では、魂が生前存在していたという説明であり、死後も存在し続ける説明にならないと言い、既に輪廻循環説などで証明されたといっても、死をお化けのように恐れる子供が自分の中にいるから、更に納得させてくれと要請した。そこでS(ソクラテス…

「パイドン」読中感④ 想起説についての感想 

霊魂不滅の証明の(2)想起説による証明で、シミアスが「真実在(イデア)が最高度の意味で存在する、という以上に私にとって明白なことはない」と、感激の面持ちで語った。S(ソクラテス)も同様であろう。つまり、S師弟はイデアへの憧れと熱意(信仰)をも…

「パイドン」読中感③-霊魂不滅の証明-1

三、霊魂不滅の証明(1)生成の循環的構造による証明-生から死へ、死から生へ S(ソクラテス)は、肉体が死滅しても魂は雲散霧消しないという証明が必要というケベスの反論に応え、まず古くから言われている輪廻説(死んで魂はあの世にいき、再びこの世に転…

「パイドン」読中感②ー哲学者は死を恐れないという弁明とケベスの反論

二、死に対するソクラテスの態度 シミアスが、平然と世を去る理由を弁明するよう要請し、S(ソクラテス)は①死後、この世を支配する神々とは別の賢くて非常に善い神々のもとにいくこと、及び②現世の人より優れた死者達と共にいる事、の二点を信じるからだと言…

プラトン「パイドン」読中感①ープロローグから自殺禁止論まで

久々に古典中の古典「パイドロス」を読み返し、生涯にわたって娯楽読書ばかりしてきた私には新鮮だった。父から「古典を読みなさい」と繰り返し言われ、反発したものだが、下手なSFや大衆小説を読むより余程面白かった。次はどうなるかと物語の展開に胸を…

プラトン「パイドロス」

実は、これは初めて読む本ではなく、遠い若い日に読んだ記憶が残っていたものである。ところが「君、花海棠の紅にあらず」のドラマで、程鳳台が商細蕊の舞台に魅せられ、また祝宴を台無しにした彼を叱ろうとして逆に説得されてしまう体験をし、商細蕊に惹か…

「君、花海棠の紅にあらず」感想-2

先日、あまりにも簡単に感想を記したので続きを書きたくなった。 天才的京劇役者商細蕊は、その才能に対するあらゆる梨園の妬みや意地悪に打ち勝ち、北平第一の役者としての揺るぎない人気と地位を確立していく。機会を得て、好敵手と南京を訪れる、憧れの崑…

イデアへの愛、中国ドラマ「君、花海棠の紅にあらず」感想

テレビは殆ど見ない私だが、代わりに娯楽としてアマゾンプライムビデオを見る。レンタルビデオと違い、返却する必要がなく試しに少し見て面白そうなら続けて見ることもできるし、そうでなければ止めて別の作品を覗くこともできる。昔、本屋でまず試し読みし…