inner-castle’s blog

読書、キリスト教信仰など内面世界探検記

読書&映画等感想文

ゲーテ「ファウスト」読書の記憶

小学校の三年生か四年生のころ、クラスで隠し芸大会があった。手品や日本舞踊など、当時はお稽古事が盛んだったからなかなか芸達者のクラスメートが多かった。そこに混じって私は紙芝居を演じた(何をやったかは忘れたが、図書館から借り出した童話だったと…

市川喜一著:「福音の史的展開Ⅰ・Ⅱ」

私はクリスチャンホームで生まれ育ち、教会で知り合った人と結婚し、生涯にわたって聖書を読み、説教を聞き、キリスト教関係の読書をしてきた。だが、少し掘り下げて読もうとすると、同じ福音が、新約聖書の文書毎に多少異なる事に気がつく。「律法の一点一…

アニメ「四月は君の嘘」

この夏は、暑さ、及び取り組んでいる聖書の箇所の難解さに、限界を感じまくった日々であった。そこで、頭を使わず楽しめるアニメ漫画を見て過ごした。標題のアニメは、中でも出色の名作と思えた。それに、自分から選んでまでは聴かないポピュラーなクラシッ…

映画「エゴイスト」

映像作品は完全に娯楽のためと思っているので、深刻で悲しい話は敬遠するのだが、偶々レンタルビデオ店に返却に行ったら標題の映画がDVD新作レンタルされていた。小説も読んだことだし、鈴木亮平さんのファンでもあるので借りてみた。 原作では、主人公の…

台湾BLドラマ「隣のきみに恋して-Close to You」

アニメ「天官賜福」にはまって以来、私もすっかり腐女子(BL好きの女)になってしまい、堅い本に飽きると主にアマゾンプライムビデオで軽い娯楽作品を観ている。だが、殆どが思春期の少年達のモヤモヤした気持ちとか、こそばゆい性的興味本位のものが多く、見…

手束正昭著「キリスト教の第三の波」を読んで

コリント前書14章は「異言と預言」とタイトルされている。(タイトルは今までの口語訳にはなく新共同訳からで、余計なものが付加された気もしないでもない)。内容は簡単で、「異言」は(異言の賜物を与えられた)その人を造り上げる(ここに言う「造り上げ…

高山真著 小説「エゴイスト」 

待ち合わせ時間まで50分あり、薄い文庫本で時間を潰そうと思って買った。素敵な人だなと思っていた鈴木亮平さんが表紙だし、同名の映画(おそらく原作)で受賞したことがニュースになっていたので迷わず購入。喫茶店でコーヒーを前に読み始めたら、なんとま…

「全き愛は、恐れを取り除く」

最近、久しぶりに映画館で「青いカフタンの仕立屋」という作品を見た。予告編にあったブルーのシルクサテン地に金色のモール刺繍が施されたカフタンドレスに魅せられたからである。しかし、どうしてこうも男性の同性愛がらみの作品が多いのだろう。禁断の愛…

子役の演じる「紅楼夢」

娘時代、「紅楼夢」を読みふけって親に叱られた記憶がある。その時の本はとっくに失ってしまったが、アマゾンプライムビデオで表記のドラマを発見した。子供が演じるのでは学芸会レベルと思ったが、少し覗いて見た。 ふっくらほっぺの子供達が、付け髭で「……

プラトン「パイドロス」

実は、これは初めて読む本ではなく、遠い若い日に読んだ記憶が残っていたものである。ところが「君、花海棠の紅にあらず」のドラマで、程鳳台が商細蕊の舞台に魅せられ、また祝宴を台無しにした彼を叱ろうとして逆に説得されてしまう体験をし、商細蕊に惹か…

「君、花海棠の紅にあらず」感想-2

先日、あまりにも簡単に感想を記したので続きを書きたくなった。 天才的京劇役者商細蕊は、その才能に対するあらゆる梨園の妬みや意地悪に打ち勝ち、北平第一の役者としての揺るぎない人気と地位を確立していく。機会を得て、好敵手と南京を訪れる、憧れの崑…

イデアへの愛、中国ドラマ「君、花海棠の紅にあらず」感想

テレビは殆ど見ない私だが、代わりに娯楽としてアマゾンプライムビデオを見る。レンタルビデオと違い、返却する必要がなく試しに少し見て面白そうなら続けて見ることもできるし、そうでなければ止めて別の作品を覗くこともできる。昔、本屋でまず試し読みし…

竹枝郎と天狼君 〝さはん(人渣反派 自救系統)〟より

以前取り上げた墨香銅臭作「人渣反派 自救系統」(略称さはん)の感想続きである。 この作品の舞台は、仙人界を含む人界、人界に絶えず侵略してくる魔界の二つに分かれている。主人公「洛氷河」は、人間と魔物のハーフであり、彼に慕われる仙術師匠「沈 清秋…

小説「繁花」を読んで

「結婚狂詩曲」は、日中戦争の時代の中国の若者達を描いていた。だが、私が一番気になっていたのは、自分と同世代の中国人達のことである。この小説「繁花」の著者は1952年生まれ、共産党員だった父の失脚により不遇の時代を過ごし、文化大革命中の1969年に…

「結婚狂詩曲」(原題「囲城」)感想 おまけ

(3)ミス蘇(蘇文紈=スウ・ウエンワン) 小説読了後、直ちに感想文を書いてそれで終わらせるつもりだったが、登場人物の中で唯一人、彼女だけが心に残り思い返されたので追記を書くことにした。 主人公鴻漸の関係が破綻に終わったと知った時、彼女はたいし…

結婚狂詩曲(原題「囲城」)感想-2

(2)中国人女性の愛の表現 まだ結婚もしない娘時代に「紅楼夢」を読んでいて気になる事があった。女主人公の一人は、天上の住民であった主人公に水を注いで貰った天の草の精であり、主人公が罪を得て下界(人間界)に落とされる際に、一緒に下界に転生し、…

銭鐘書著 「結婚狂詩曲」(原題「囲城」)感想

「天官賜福」その他近頃中華BL小説を楽しんでいたので、参考までにと軽い気持ちで本書を入手した。非常に面白く夢中になったところで体調を崩し、視神経もやられて文庫本文字が読めなくなり、やむなく中断。やっと、8月に入って読み終わった。 感想は一言…

「天官賜福」感想、おまけ

邦訳「天官賜福」感想で、「三界の笑い者」主人公謝憐が目指す救済を、今後の展開のなかで読み取って行きたい、と書いた。実は、それは彼の愛読書「道徳経=老子」の思想だろうと密かに思っている。 老荘思想は、島国日本では考えられないほどシビアーな殺し…

「天官賜福」第一巻 感想-2

漫画やSFでよく「転生」物を見かける。私はクリスチャンの家庭に育ったせいか、生々流転を意味する輪廻や転生といったことは全く信じていないし、縁遠い観念である。だが日本や中国といったアジア文化圏では、死ぬと宇宙の元素のようなものに還元され、ま…

邦訳「天官賜福」第一巻 感想

やっと中国語BL小説「天官賜福」の日本語翻訳本第一巻が発売された。アニメで夢中になり、有志翻訳で続きを読み、有志翻訳されていない部分は原文を魔翻訳してまで読んでいるから、話の筋は大体分かっていても、じっくりと翻訳されている書籍文章を読んで…

服部真澄著「千年の眠りを覚ます『伊勢物語』」

一月ばかり前、思いがけず心筋症の発作で入院し、もしかしたら人生終わりかななど思ったことがあった。その際、思い出した事と言ったら些細な心残りばかりで自分でも苦笑してしまった。そして連想したのが、伊勢物語の呆れた「世心つける」老女の段である。…

墨香銅臭作「人渣反派 自救系統」

神は預言者に一つの幻を示して言われた「アモスよ、あなたは何を見るか」。アモスが「一かごの夏の果物」と答えると、神は「わが民イスラエルの終りがきた」と語られた。 これは、預言書中でも最も印象的な場面の一つであり、私は子供の頃から「瓜」や「西瓜…

「メメント・モーリー(汝、死を憶えよ)」、ポンペイ展を観て

高校時代の英語の先生が、当時まだ珍しかった欧州旅行に行かれた。授業中に、フランス・ドイツ・イタリアと巡られたお土産話をして下さった。パリやウィーンの事はいくらか報道や映画で知っていた。だから、特に印象的だったのがポンペイで体験された事であ…

映画「人生は小説よりも奇なり」(原題Love is Strange)

たまたま、題名に惹かれてレンタルしたDVDである。それは、熟年同性婚カップルの物語であった。 あらすじは以下の通り。「ニューヨーク、マンハッタン。39年間パートナーとして同居してきた画家のベンと音楽教師のジョージは、同性婚が法律上認められて晴れ…

映画「安魂」

岩波ホールが間もなく閉館になると聞き、若い頃から親しんだ映画館を最後にもう一度訪れてみた。中国と日本の合作の「安魂」がかかっており、息子を亡くした父親がそのショックをどのように乗り越えるかがテーマになっていた。 原作の小説と映画は、中身が大…

カラマーゾフの兄弟-4

何度かこの作品の感想を書きかけたのだが、今は少々後悔している。やはり私の好む小説ではない。しかし、話の本筋ではないアリョーシャと少年達の場面だけは心に残り忘れられない。特に、最後に死んでしまうイリョーシャという少年のことである。 彼の父スネ…

カラマーゾフの兄弟-3

長男ドミトリーは、この作品の中で一番わかりやすい人物である。彼は、父親の生への情熱を受け継いでいるが、金銭欲はそうではない。母親がそうであったように、自分の情熱のままに生きる独立不羈な性格である。母親の遺産を受け取るために帰郷したら、父親…

「カラマーゾフの兄弟」-2

この作品を今回に読み返して、以前は嫌悪しか感じなかったスメルジャコフに、はじめて同情した。彼は、白痴の乞食女が産み落とし、下男のグレゴリーに育てられた孤児である。おそらく彼の母親をはらませたであろうフュードル・カラマーゾフから、父称フュー…

「カラマーゾフの兄弟」

「大審問官」で有名なこの本は、誰でも若いときに一度は読むもののように考えられている。だが、私にとっては、自分の読書というより、子供の頃に父から読み聞かされた思い出が一番強烈である。30歳前後の青年であった父は、これを愛読していたのであろう。…

魔道祖師-3

前回ヒロイン籃湛を取り上げたので、主人公魏嬰についても書いてみたい。魏嬰一筋で分かりやすい籃湛と異なり、魏嬰はかなり複雑である。 日本で家族制度が廃止されてからかなり経ち、今の私達はほぼ個人の意識で生活している。だが、中国は氏族社会としての…