inner-castle’s blog

読書、キリスト教信仰など内面世界探検記

アニメ「四月は君の嘘」

 この夏は、暑さ、及び取り組んでいる聖書の箇所の難解さに、限界を感じまくった日々であった。そこで、頭を使わず楽しめるアニメ漫画を見て過ごした。標題のアニメは、中でも出色の名作と思えた。それに、自分から選んでまでは聴かないポピュラーなクラシックの名曲を、少年の淡い初恋とピアノ演奏の成長に合わせて聴くことができた。
 主人公は、シューベルトを思わせる黒縁眼鏡の内気な少年である。彼は小学生時代、ピアノ・コンクールで一位をとりまくった天才であったが、母の死がトラウマになり、中学入学から2年間ピアノが弾けなくなっていた。だが、ヒロインの少女との出会いがきっかけになり、自分が演奏する音が聞こえないという障害を乗り越え、再びピアノに向かい合うようになる。
 ①ショパンエチュード25-5
 「人間メトロノーム」と評された正確無比の演奏から、自分の中にある表現意欲にもとづく演奏に気づくシーン、こちらまで曲に引き込まれて聴いた。
 ②クライスラー:「愛の悲しみ」ピアノ独奏篇
 ヒロインと二重奏するはずのガラ・コンサートに、彼女は現れない。怒りと悔しさの中で、弾き始めたこの曲は、亡き母の愛した曲だった。厳しい指導で彼を苦しめた母、音楽に再び向かい合うよう引っ張ってくれた彼女、いつも温かく寄り添ってくれた幼なじみの友、思い出はいつの間にか怒りではなく彼らすべてに対する感謝と愛情に変わる。演奏することが、こんなにも感情表現になるのか、と思いつつ、いつもはあまり惹かれないこの曲を改めて味わった。
 ③ショパン:バラード23 遺作
 「演奏する音がきこえないって、ギフトじゃない?君の中にある音が外に出たがっているのよ」母の友人のピアニストにこう言われた事が、「自分の中にある音」に気づくきっかけになった。今は、病床にある彼女に届けと演奏する。物語に感動したのか演奏に感動したのか、どちらか分からないが胸が一杯になる。演奏中に彼女の幻が現れ、彼と目を合わせつつヴァイオリンを演奏する。彼女は、彼を導くミューズである。こういう、甘酸っぱい憧れを久々に追体験して、こそばゆいような気持ちになった。
 その演奏会と同時に行われた手術がしっぱいし、彼女は世を去った。渡された遺書には、幼い日から彼の演奏に憧れた彼女が、死を間近に「弾けて」強引に彼に近づいたこと、そして彼を愛していたことが記されていた。
 以上、アニメと音楽を堪能し、気がつけばやはり、死を超えた希望を取り上げたコリント前書15章に、取り組まざるを得ない現在である。