inner-castle’s blog

読書、キリスト教信仰など内面世界探検記

死後の生:リンドグレーン著「はるかな国の兄弟」

リンドグレーンは「長靴下のピッピ」でおなじみの作家だけれど、私はあまり魅かれなかった。明るく、屈託がない子供(ピッピのような)なんて共感が起きなかったのだ。子供の心には、恐れや自信のなさ、迷いや混乱が存在している。もがいてもがいて、縋り付く…

映画「マグダラのマリア」

レンタルで「マグダラのマリア」という新作DVDを見かけ、借りてみた。 マグダラのマリアは、イエスの女性弟子の一人で「七つの悪霊を、イエスに追い出してもらった」と聖書に書かれている。ということは、現代風にいえば重い精神的障害をイエスに癒された…

映画「ボヘミアン・ラプソディ」

年末に、話題の「ボヘミアン・ラプソディ」を観た。 「クィーン」は私とほぼ同世代のロックバンドである。だが、彼らがヒットしていた時は、子育てや生活に追われてロックミュージックどころではなかった。流行っていることだけは知っていたが、ほぼ初体験で…

泥足にがえもん

C.S.ルイスの「ナルニア国」物語シリーズは、子供向けファンタジーとされているが、私も大好きな読み物である。あまりキリスト教的に解釈しなくても、素直に、物言う動物や登場人物のキャラクターを楽しんでいいと思う。 シリーズの1巻に「銀の椅子」が…

映画「パウロ」を見て

先日、渋谷で映画「パウロ」を観た。正直言って、やはりね~と、ため息が出る内容であった。一番神経に触ったのは、ローマの大火の結果、キリスト者に対する迫害が起こり、街灯の代わりにキリスト者を焼き殺して灯りにするなどの悪趣味な描写があったことで…

メサイア第三部 キリスト再臨

今年もまたクリスマスが近づいてきた。ここ数年、この時期になると掃除のアルバイト仲間とヘンデルの「メサイア」を聴きに行く。今年は私がチケットを買う当番で仲間と自分の席を確保した。 メサイアは子供のころからなじみの曲で、クリスマスが近づくと聴く…

使徒パウロ5、伝道旅行とエルサレム教会への献金、ローマへの護送・殉教

伝道旅行とエルサレム教会への献金、ローマへの護送・殉教 エルサレム・アンテオキア両教会は、ユダヤ人キリスト者としてそれぞれ、ユダヤ人・異邦人伝道を分担することで合意が成立した。だがパウロは、(アンテオキア教会ではなく)自分こそがエルサレム教…

使徒パウロ4 アンテオキアの衝突と独立した伝道の再開

使徒パウロ4 アンテオキアの衝突と独立した伝道の再開 映画を見に行く前のおさらいのつもりで始めたパウロの生涯と活動の勉強は、今までの不勉強がたたってえらくヘビーな作業となってきた。大体、日曜学校以来、使徒行伝そのままのストーリーが頭にあるの…

使徒パウロ3 第一回エルサレム上京からアンテオキアを中心とする活動時代 

第一回エルサレム上京から使徒会議と第一回伝道旅行(35~48年頃) ①第一回エルサレム上京(35年頃) ダマスコでナバテア王代官から逃れた直後、パウロは「ケパ(ペテロ)と近づきになるために」エルサレムに上京し、ケパのもとで足掛け15日滞在し、その間主…

使徒パウロ2 回心と召命

教会の迫害者-回心と召命 使徒行伝によれば、エルサレム原始教会内部に、ヘレニスト(ギリシャ語を母国語とするディアスポラのユダヤ人)とヘブライスト(アラム語を母国語とするパレスチナのユダヤ人)の対立が起きたとある。これは、実は物資配給問題では…

使徒パウロ1

11月に「パウロ~愛と赦しの物語~」という映画が封切りになるとのこと、教会にポスターが貼ってあった。教会の仲間と一緒に見に行くことになったので、使徒パウロの伝記をおさらいしてみようと思う。 夫の蔵書の中で参考になりそうなものを探し、ボルンカム…

ペテロ3…教会を建てる土台としての岩

3.クルマンは殉教者としてのペテロについて1章を割り当てて考察している。ローマ教皇権との関係で、実際にローマに行ったかどうか及びそこで殉教したかどうかが検討される必要があるためだ。パウロ同様ペテロの殉教についても新約聖書は直接言及せず、間…

ペテロ2、使徒として

2.使徒ペテロ 前回はイエス在世中の弟子ペテロであった。イエスの死と復活の後、彼は単に弟子集団代表ではなく、主がこの世におられないことからこの弟子小集団の指導を一定期間果たすことになる。また主から特別な委任(「兄弟たちを力づけてあげなさい」…

シモン・ペテロ1

クルマン著「ペテロ」を読み返した。お堅い神学書であるけれど、原始キリスト教史に関わるもので、それほど難解ではない。新約聖書でもっとも親しみを感じるペテロについて、この本に刺激されていろいろ考えさせられた。しばらく、ペテロのことを書いてみよ…

パソコンダウン

愛用のパソコンがダウンした。メール送受信のみならず、ネット検索や手紙などの文書作成もままならない。早速、新規購入したが、今まで便利に使っていたデータも別のHDDに保存していたもの以外は、すべてパーになった。 なにもかも、新規まき直しである。ま…

クラナッハ:ザクセン公ヨハン・フリードリヒの肖像

少し前だが、クラナッハ展を見に行った。クラナッハはルターと親交があり、ルターの肖像画を描いている。会場では、エロチックと評判のある裸体画や敵将の生首を前にした烈女ユディトの絵の前に人だかりがしていた。だが、私が注目したのは彼の主君、ザクセ…

バッハ:マニフィカート

バッハのマニフィカートを初めて聴いた時、「マンニフィカート」と歌い出すその凶暴なまでの溢れる歓喜に驚愕した。 マリアの妊娠は婚外妊娠であり、結婚を控えた若い乙女にとって迷惑な出来事であり、いくら神の思し召しであっても、天使に祝福されたとして…

蒼月海里「幻想古書店で珈琲を」

「いうまいと思えど今日の暑さかな」。猛暑さすがに応えている。 パートの仕事を終えた帰宅の電車内で思わず居眠りがでる。何か考えさせるものではなく、煙草一服程度のうんと軽い本が読みたくなり、上記文庫本を手に取った。 三省堂書店の店員さんが書いた…

「私も同様に喜びの足どりであなたについて行きます。」

バッハのヨハネ受難曲の第9曲アリアが好きである。 これは、ゲッセマネで捕縛され大祭司アンナス宅に連行されるイエスの後を、ペテロともう一人の弟子(ヨハネ?)が密かについて行った(folgete)と福音書が述べられた後すぐに歌われる。 「私も同様に喜び…

音楽と言葉

30代の頃、アルノンクール&レオンハルトの「バッハカンタータ大全集」というレコードに図書館で出会った。古楽器の演奏による物だが、それまで体系的に教会カンタータを聴いたことが無かったので、大いに感激した。1巻づつ借り出して、夢中になって聴い…

「世界からの風に耐えて、自分の立場に根をおろす」

あまりテレビを見る方ではない。だが先日たまたまテレビをつけ、放送大学の「世界文学への招待」という番組を途中から見た。フランス海外県サンクレールという島に住む作家のインタビューで、世界文学とはと聞かれ、「インターネットほか通信手段が多様に発…

モルトマン神学

このブログにしばらく投稿しないでいたら、はてなブログから励ましのメールを戴いた。日記代わりにもなるから、近況その他そのとき考えていたことの記録としても投稿を続けなさいとのこと。夫の説教遺稿の投稿にかまけていたが、私自身の記録としてブログを…

金沢、足軽資料館の幻想

本当に久しぶりに投稿となった。 一つは、自分のブログよりも亡夫の説教原稿を投稿するに忙しかったことがある。彼の生涯は、憑かれたように熱心に聖書を勉強し、説教を作ることを生き甲斐とした。誰よりも、自分自身のために説教を作ったのであろう。聴衆が…

映画、「孤独のススメ」感想

レンタルビデオ屋をのぞいた。コメディの棚に、初老の男のカバーで「孤独のススメ」があったので、借りてみた。 真っ平らなオランダの郊外をバスが走っている。乗客も少ない。初老で独り者の男(フレッド)が、バスをおりる。自宅前の原っぱで子供たちがサッ…

映画好き

亡くなった夫は、映画大好き人間であった。新婚早々、夫婦喧嘩で小遣いを使いすぎるとなじったところ(とても貧乏だったので)、「映画だってこの頃は月に1回くらいしか見ていないぞ!」と言いかえされたのには驚いた。年に2回か3回映画館に行く程度の私…

「耳がない」こと

もう、相当昔、英語の教材で「エリア随筆」からドリーム・チルドレンを読んだ。それから、しばらくc・ラムに夢中になり、戸川秋骨訳「エリア随筆」を読みふけったことを思い出す。 就職、結婚、子育て、夫の病気と介護、生活の闘いの連続で、「エリア随筆」…

上橋菜穂子「闇の守人」、愛する者を弔うということ。

日本文学には、聖書の神の意識がなく、情感的には共感するだけに、知的結論にはどうもついていけない気がする。 だが、これだけは日本物でなくてはと思う分野がある。それが、剣豪小説や格闘技の登場する分野である。といっても眠狂四郎の円月殺法のような、…

おらはおらで独りでいくも

芥川賞を獲得した作品が、ある寡婦の「おらはおらでひとりでいくも」だそうである。 そく、宮沢賢治の絶唱、「永訣の朝」から取られていることを思い出した人は多いだろう。結核で世を去ろうとする最愛の妹が、いまわの際に賢治に一椀の雪を所望する。「私を…

アイヴァンホー(2) ドラクロワ「レベッカの略奪」

ドラクロワ展を見に行ってタイトルの絵に出会った。絵の題材はおおかた聖書かギリシャ・ローマ神話と思いこんでいた私には、さっぱり何の絵かわからなかった。一人の獰猛な顔つきの黒人が火事場とおぼしき立派な部屋から女を拐帯して脱出する場面を描いてい…

「ジェーン・エア」を読む

「ジェーン・エア」を読む ①キリスト教信仰の観点から 永年、映画や小説で「ジェーン・エア」を愛読してきた。全体に英文学を好む私であるが、それだけでなく、文化や時代を異にするとはいえ、貧しい牧師の娘として育った作者に自分と共通する意識(キリスト…